
デフサッカーは、聴覚に障がいのある選手たちがプレーするサッカーですが、選手一人ひとりの難聴の原因や症状はさまざまです。
生まれつきの難聴、進行性難聴、前庭水管拡大症、人工内耳を装用している方など、それぞれ病気や身体の状態が異なるため、競技への向き合い方も同じではありません。
例えば、私が患っている前庭水管拡大症は、頭部への強い衝撃が聴力に影響を及ぼす可能性があるため、ヘディングなどには十分な注意が必要とされています。そのため、私は主治医と相談しながら、自分の身体と向き合い、自分に合ったプレースタイルで競技を続けています。
一方で、デフサッカー日本代表には、人工内耳を装用しながらヘディングを含めたプレーをしている選手もいます。 難聴の原因や病気が異なれば、競技中に必要となる配慮も異なります。そのため、人工内耳を装用している場合も含め、それぞれが主治医の指導を受けながら、安全面に配慮して競技に取り組んでいます。
このように、「デフサッカー選手だから全員同じ」というわけではありません。大切なのは、自分の病気や身体の状態を正しく理解し、主治医や家族、指導者と相談しながら、自分に合った方法で競技を続けることです。
私も前庭水管拡大症という病気と向き合いながら、自分にできるプレーを磨き、代表として世界大会に出場することができました。それぞれの病気や障がいには、それぞれの向き合い方があります。だからこそ、「できないこと」に目を向けるのではなく、「できること」を伸ばし、自分らしく挑戦することが大切だと私は考えています。
ぜんていすいかんかくだいしょう
前庭水管拡大症とは
前庭水管拡大症(EVA:Enlarged Vestibular Aqueduct)は、耳の奥にある「内耳」の一部である前庭水管という器官が、生まれつき通常より大きく発達している先天性の疾患です。前庭水管は、内耳のリンパ液のバランスを保つ役割を担っており、この器官が拡大していることで、聴覚や平衡感覚にさまざまな影響を及ぼすことがあります。
この病気は、小児の感音難聴の原因の一つとして知られており、乳幼児期から難聴が見つかる場合もあれば、成長するにつれて徐々に症状が現れる場合もあります。また、聴力が一定ではなく、「昨日までは聞こえていた音が今日は聞こえにくい」というように、聴力が変動することも大きな特徴です。風邪や発熱、頭部への衝撃などをきっかけに聴力が低下するケースもあり、一度低下した聴力が回復することもあれば、そのまま戻らないこともあります。
症状には、感音難聴のほか、めまい、ふらつき、バランス感覚の低下などが見られることがありますが、症状の現れ方には大きな個人差があります。同じ前庭水管拡大症と診断されても、日常生活にほとんど支障がない方もいれば、補聴器や人工内耳を必要とする方もいます。
原因としては、SLC26A4遺伝子の変化が関係しているケースが多いことが分かっていますが、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。現在の医学では根本的に治す治療法は確立されていませんが、定期的な聴力検査や耳鼻咽喉科での経過観察を行いながら、補聴器などを活用して生活の質を維持することが大切とされています。
前庭水管拡大症と診断されたからといって、すべての夢を諦める必要はありません。一人ひとり症状や経過は異なるため、主治医と相談しながら適切なサポートを受けることで、学校生活やスポーツ、仕事など、さまざまなことに挑戦している方が全国にたくさんいます。
前庭水管拡大症
主な症状
前庭水管拡大症の症状は一人ひとり異なり、同じ病名でも症状の程度や経過には大きな個人差があります。幼い頃から難聴が見つかる方もいれば、成長するにつれて徐々に症状が現れる方もいます。また、日常生活にほとんど支障がない方もいれば、補聴器や人工内耳などの支援が必要になる方もいます。
主な症状には、次のようなものがあります。
- 感音難聴
内耳の働きに影響が出ることで、音は聞こえていても言葉が聞き取りにくくなったり、高い音が聞こえにくくなったりします。 - 聴力変動
前庭水管拡大症の大きな特徴の一つです。日によって、あるいは体調によって聞こえ方が変化することがあり、「昨日まで聞こえていた音が今日は聞こえにくい」と感じることがあります。 - 徐々に進行する難聴
年齢を重ねるにつれて、少しずつ聴力が低下していく場合があります。進行の速さや程度は人によって異なります。 - めまい・ふらつき
内耳は平衡感覚にも関わっているため、めまいやふらつき、バランスを崩しやすくなる症状が現れることがあります。 - 頭部への衝撃などによる聴力低下
転倒やスポーツ中の接触、頭を強く打つことなどをきっかけに、急激に聴力が低下する場合があります。また、風邪や発熱、強い気圧の変化などが影響することもあるとされています。
しかし、前庭水管拡大症と診断されたからといって、すべての人に同じ症状が現れるわけではありません。症状が軽い方もいれば、補聴器を使用しながら学校生活や仕事、スポーツを楽しんでいる方も多くいます。大切なのは、定期的に耳鼻咽喉科で聴力の経過を確認し、自分の症状を理解しながら生活することです。適切なサポートを受けることで、学業やスポーツ、仕事など、それぞれの目標に向かって挑戦し続けることができます。
スポーツもできる
サッカーはできるの?
「前庭水管拡大症だからスポーツはできない」「サッカーは諦めなければならない」と思われることがありますが、必ずしもそうではありません。
実際には、前庭水管拡大症と診断されても、サッカーをはじめとするスポーツを楽しみながら生活している子どもや大人はたくさんいます。大切なのは、病気について正しく理解し、自分の身体の状態を把握しながら活動することです。
一方で、前庭水管拡大症は頭部への強い衝撃などがきっかけとなり、急激に聴力が低下する可能性があることも知られています。そのため、競技を続けるかどうかは耳鼻咽喉科の主治医と相談し、一人ひとりの症状や聴力の状態、競技レベルなどを総合的に判断することが大切です。
海外の医学的な考え方でも、「前庭水管拡大症だからすべての子どもがスポーツを禁止される」という十分な根拠はなく、個々のリスクを評価しながら判断することが推奨されています。病気だけで一律に可能性を狭めるのではなく、その子に合った環境づくりやサポートが重要とされています。
私自身も前庭水管拡大症と向き合いながらサッカーを続け、多くの方々の支えを受けて日本代表として世界大会の舞台に立つことができました。もちろん、不安や困難がなかったわけではありません。しかし、適切な医療機関での定期的な受診や、家族・指導者との連携を大切にしながら、一歩ずつ夢に向かって努力を続けてきました。
前庭水管拡大症は、一人ひとり症状が異なります。そのため、他の人と比べるのではなく、自分自身の身体と向き合い、主治医や家族と相談しながら挑戦していくことが大切です。
「前庭水管拡大症だからできない」ではなく、「前庭水管拡大症でもできる方法を考える」。
私は、自分の経験を通して、同じ病気で悩む子どもたちやご家族に、「夢を諦めなくてもいい」という希望と勇気を届けたいと思っています。

